社会・生態システムでの再生可能エネルギーネクサスの分析:導入ポテンシャルの高空間解像度化プログラムの公開

Abstract

気候変動緩和策として再生可能エネルギーを導入するにあたり,地域社会への多様な正負のnexus (ラテン語でinterlinkagesを意味する) を究明しつつ,社会・生態的な課題の同時解決を図ることが期待されている.そこで本研究では,環境省は再生可能エネルギー情報提供システムREPOSで公開されている再エネポテンシャルデータを2分の1地域メッシュに集計し,社会・生態システムの変数とのnexusを可視化した. まず,REPOSの1) 住宅系太陽光,2) 公共系太陽光,3) 洋上・陸上風力,4) 中小水力,5) 地熱,6) 未利用系バイオマスを2分の1地域メッシュに集計・推計し,再エネポテンシャルデータベースを構築した.洋上・陸上風力は風速データのみ公開されているため,REPOSの推計アルゴリズムを参考にポテンシャル量に換算した.また,公共系太陽光である公共系建築物,発電所・工場・物流施設,低・未利用地,農地は都道府県別に集約されているため,国土数値情報から入手可能なデータでエネルギー種別に空間的に按分した.未利用系バイオマスには,林地残材を熱利用することを想定し,NEDOの都道府県別の推計値を2分の1地域メッシュ別の森林面積で按分した. 次に,構築したデータベースと社会・生態システムの特徴量を2次メッシュ単位で集計し,指標間のnexusを可視化した.再エネの特徴量には,総再エネポテンシャル (kwh/y),再エネポテンシャル (kwh/y) の多様度 (-),再エネの土地被覆のシンプソンの多様度 (-),社会システムの特徴量には,エネルギー需要と再エネ供給量のバランスで評価するへのエネルギーアクセス性 (-),2020年の生産年齢人口割合 (-),2050年までの人口減少率 (-),生態システムの特徴量には,絶滅危惧鳥類・コウモリの在情報,メッシュ内の植物群落数を用いた. REPOSの全国合計値と比較すると,94-107%と高い精度でデータベースを構築できた (https://github.com/Green-Engineers-Lab/REROUTES).2分の1地域メッシュの77%のメッシュに再エネポテンシャルが広く分布し,社会システムの特徴量の再エネのアクセス性や生産年齢人口率や,生態システムの特徴量の植物群落数や絶滅危惧種の鳥類の分布との相関が確認された.さらに,2次メッシュでの分析からは洋上風力型,太陽光型,陸上風力・中小水力・バイオマスミックス型,中小水力・地熱ミックス型のクラスタが特定された.再エネと社会・生態システムのnexusがクラスタ別に異なることが可視化され,地域の特性に応じた導入の必要性や,地域間連携の重要性が示唆された.

Publication
日本景観生態学会第31回大会要旨集