Poster Presentation "Nature Positiveかつ望ましい将来の景観のモデリング - 別寒辺牛川流域でのケーススタディ"

Image credit: Chihiro Haga

Abstract

自然及びその便益に関する多様な価値を内包したポジティブな将来シナリオを描くことは、地域スケールの社会生態システムの変革を設計するために重要である。本研究では、生物多様性分野のシナリオ分析の枠組みであるNature Futures Framework (NFF) を景観スケールのシナリオ分析に応用するために、Nature Positive (NP) な将来を探索し、多様な価値の側面から望ましい将来像に到達できる複数の経路を特定し、その将来像に到達するための主要な駆動因を特定するためのプロトコルを開発した。本研究では北海道東部の別寒辺牛川流域を対象地域とした。まず、起こりうる森林・農地管理や再生可能エネルギーの導入方法について110通りの景観管理方法の組合せを作成した。それぞれの管理方法について、森林景観モデルLANDIS-IIで2015年から2100年の植生遷移をシミュレーションした。シミュレーション結果から、将来の状態がNPかどうか評価するCommon valueと、自然及びその便益に関する多様な価値のうち、1) 内在的価値を重視するNature for Nature (NN)、2) 道具的価値を重視するNature for Society (NS)、3) 関係性価値を重視するNature as Culture (NC) のNFFの3つのビジョンに対応する3種類の指標を算出した。次に、現在よりも2030・2050年代のCommon valueが改善されるNPな景観管理方法を特定した。また、NN、NS、NCの3つの側面から等しく望ましい将来の状態を特定するために、3次元の価値空間でのパレート解を特定した。最後に、NPかつ望ましい将来像に到達するための重要な介入策を決定木分析で特定した。結果から、110の景観管理方法が(1) NPかつNFFの3つのビジョンを満たすパレート解、(2) NPだがパレート解ではない、(3) NPではない管理方法の3種類に分類された。また、NPかつ3つの異なるNFFのビジョンを達成するためには、森林では主伐方法、牧草地では放棄牧草地への太陽光パネルの導入面積が重要な介入策であることが特定された。ケーススタディを通して、別寒辺牛川流域での景観管理への示唆と、NFFを応用した地域のシナリオ分析のための課題と今後の展望を議論した。

Date
May 27, 2023
Location
淡路市
Haga, Chihiro
Haga, Chihiro
Specially Appointed Assistant Professor

Haga, Chihiro is an landscape ecologist conducting a scenario analysis of nexuses between biodiversity and ecosystem services at a local scale. His research experiences include the application of the process-based forest landscape simulator for social-ecological systems modeling.

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